次に「レース展開」について考えていきますが、その前に、レース展開と深く関わりのある「馬の脚質」について整理しておきましょう。
馬の脚質には、ご存知のように「逃げ」「先行」「差し」「追込み」の4種類があります。「先行差し」なんて表現もありますが、この4種類でいいでしょう。
ちなみに、先行して直線でもうひと伸びできる「先行差し」馬は強いですよ。
サイレンススズカは逃げて直線伸びる(差し)ということで、武豊騎手が理想的な脚質だと絶賛していました。
かつての中京2000メートル芝のコースでディープインパクトと戦っていたら、どういう結果になったでしょうかね……。
さて、話を元に戻しましょう。
「逃げ」「先行」「差し」「追込み」の4種類の脚質の中で、馬券的に最もパフォーマンスがあるのは、当然のことながら「逃げ」です。
データをみなくてもわかります。
なぜかというと、逃げ馬というのは1レースに基本的には1頭しかいないからです。
脚質別の割合は、10頭立てのレースの場合、「逃げ1:先行4:差し3:追込み2」というのがザックリとしたイメージでしょうか。
もっともメンバー構成によっては「1:3:3:3」にも「1:2:4:3」にもなりますが、いずれにしても集団の一番先頭にいる逃げ馬は、1頭しか存在しません。
以前から言い尽くされていることではありますが、全レースで実際に逃げた馬の単勝なり複勝を買い続ければ、回収率は軽く100%を超えます。100%を超えれば、「複利のマジック」を使ってとてつもない利益を生み出すことが可能です
ですから「逃げ馬必勝法」というのは十分に考えられるのですが、実際には超難関です。
なぜならば、逃げると予想した馬と、実際に逃げる馬が異なるからです。
「逃げ馬の回収率150%」なんていうデータをよくみかけますが、あくまでも結果論に過ぎません。
しかも「諸刃は剣」でもあり、逃げ馬は自分のペースで逃げた時にはめちゃくちゃに強いのですが、逃げられなければ悲惨です。
超・超・超大昔、1F毎に12.5秒のラップを刻み続けて逃げ切り勝ちをするというトーヨーアサヒという、オールドファンには涙が出るほど懐かしい個性的な馬がいました。
しかしこの馬の場合も、道中少しでもラップが乱れた瞬間に惨敗していました。
それでも、何度もいいますが、逃げ馬は1レースに1頭しかいませんので、投資効率が高いことには間違いありません。
併せて、逃げ馬は惨敗後の人気薄の時に馬券になることが結構あるので、まさに「穴党御用達」の存在です。
負ける姿が超みじめなので、敬遠する人が多いのも、投資効率を高める要因となっています。
ということで、穴馬券をゲットするためには「逃げ馬」の研究は不可欠となります。
「単騎の逃げ馬を狙え」ということは、数十年も前からいわれていました。
逃げ馬は、まさに「ドル箱」なのです。
では、逃げ馬の次にマークするのは何でしょうか。
直線スカッとする「差し馬」に目が行きがちですが、「先行馬」の方が遥かに投資効率がいいのです。
そもそも500キロからあるサラブレッドがあんなに狭い(人間からみればとてつもなく広いですが)コースを走るわけですから、先に行った馬を追い抜くのは大変なことだと思います。
ですから、「前走は4コーナー大外を回り、最速の上がりタイムで差のない4着。力はあるので今回はいける!」なんて人気になった馬が、「今回は距離ロスのないインコースを突いたけれど、前が壁になって追うに追えず、最後は猛然と追い込んで、またまた差のない4着……」なーんて事例は日常茶飯事です。
競馬は、先に行ったもの勝ちです。
確かに「差せーっ!」のほうが、「そのまま残ってぇ〜!」より男らしいし、かっこいい感じはします。
実際、狙った馬が差されてズルズルと下がっていく姿をみると、差して届かない馬をみるより惨めな感じを受けます。
2003年のスプリンターズステークスでのデュランダル。
最後の直線での、まさに糸を引いたような怒涛のような追込みは、私も現場で観戦していましたが、体が震えるくらいホレボレとしました。
でも、あんな強い馬は滅多にいません。
次元が違う強さがあるからできた芸当で、強いから馬券的にも人気になります。
つまり、配当は極めて低いので、馬券的妙味はまったくありません。
記録を調べてみると、デュランダルが刻んだラップだけが、他の年の馬とは別次元のレベルになっていることがわかります。
そういった勇姿が忘れられずに、毎年のように人気になる追込み馬がいますが、馬券にはなりません。
予想をつけている専門家も「直線不利があって負けた」という言い訳が立ちやすい、差し馬狙いのほうが、なんとなく立場が守られやすい印象を受けます。
しかし、我々が目指しているのは、見た目の体裁よりも、的中するか外れるかだけです。
「惜しいなぁ……しょうがないよ」という言葉はいりません。
馬券は「All or Nothing」でいいのです。
まったくダメなレースが3回続いても、ビシッと決まるレースが一つあれば十分です。
差し馬に人気が集まっているレースで、逃げ・先行馬で実をとることに専念しましょう。